カイジ
ふとテレビをつけたら、年末特番のカイジが放映されていた。
漫画原作バラエティ、出演者根こそぎクズと話題で気になっていたのだが、どうやら今日だったらしい。私が見始めた時にはすでに最終ステージであった。
最終ステージの内容はシンプルなすごろくゲームだった。さいころを振って進む、マスに描かれた効果に一喜一憂するあれだ。
Eカードのような心理戦かと思いきや、完全な運否天賦。少し肩透かしだが、まあ悪くない。心理戦は心情描写がないと面白くないとか、大方そんな事情に違いない。
マスには+30万ペリカ、-30万ペリカ等の一般マス、他のプレイヤーに不利益を与えるお邪魔マス、そして漢字一文字が書かれたイベントマスなどが書かれていた。
ちりばめられた±マスですら、日本円で2~3万のやり取りである。動きがなく退屈だが、参加者にとっては1マス1マスが重いことだろう。
状況が動いたのは、一番最初のイベントマスにプレイヤーが止まった時だった。
マス目には「水」と書かれていた。
イベントの内容は「1分間で2ℓの水をどれだけ飲めるか」
水を飲めば飲むだけ金がもらえる。こぼしたらアウト。極々シンプルなルールだが、いくらかエンタメに親しんだ人間ならその恐ろしさがわかるだろう。
水は最も身近な毒であり、適量を超えれば人体に牙をむく。欲をかけば身を滅ぼすというこの上ない実例を凝縮したイベントだ。ひょっとしたら借金に溺れるとか、ギャンブルに溺れるにかかっているのかもしれない。
このイベントは劇的だった。最後の挑戦者が二リットルの水を飲みほしたのである。
かなり危なっかしい飲み方で、緊張で手が滑ったら今にもこぼれそうだったが、彼は何とかペットボトルを空にしたのである。
アナウンスがタイムアップを告げた。次の瞬間である。
彼が水を吐き出し、倒れこんだのである。
「すみません」とつぶやく彼は本当に苦しそうで、視聴者に強くこのゲームの構造を印象づける。
ここにいるのは金のためなら身体の限界を超える猛者たちなのだ。と
もしもこれが地上波でなかったら、本物の帝愛のような組織が作った企画だったら。
登場したプレイヤーなら、本当に命を賭けるかもしれない。そのリアルさが生々しかった。
そして、それを感じて高揚する自分もまた恐ろしかったのである。