はじめてのコミケ後編
コミケ参加を夢見る友人Aと、歴戦の猛者感の半端ないAの友人(ちょっとややこしいのでここからはSくんとする)。その二人に挟まれた物見遊山の私。まずこの三人で冬の寒空の下、四時間の待機。これがコミケでの一番最初のミッションである。
Sくんから支給されたホッカイロで暖を取り、私が持参したパソコンの排熱で暖をとろうとし、日の出とともに男三人が日を浴びるためゆっくりと立ち上がりミーアキャットみたいになったりした。朝焼けを前に立ち上がる者たちはほかにも多数いたので、ミーアキャットの大群である。暇つぶしに教育番組みたいなナレーションを付けたら驚くほどはまってしまい、しばらくはナレーションごっこで遊んでいた。
A「工場のクレーンがキリンみたい」
S「サバンナだな」
私「有明の日の出が、サンカシャの群れをやさしく包み込みます。このビッグサイトは、現実につかれた彼らを癒すオアシスなのかもしれない・・・」
この時は深夜テンションならぬ朝方テンションなのか、舌の回転が絶好調だった。
三人でゲラゲラ笑いながら時間まで雑談していた。
そういえば人生で初めて日の出を生で見た。はずなのだが、全く印象がない。
ついに会場に入る。先ほどと同じく人の波に流されて入口に進んでいくわけだが、
Sくん「ここから俺は目当てを買うために動く。」
いくら猛者といえども、ここから素人二人は重荷でしかない。私と友人Aはペアとなり、初心者だけで戦場を進まなければならない。
地図に描かれたメモを頼りに、サークルを回っていく。方向感覚0の私は何一つ役に立たないが、相方のAは絵描きでありながら生粋の野生児、初挑戦のサバゲ―で躊躇なく茂みにつっこみ、いつの間にか敵陣の奥に到達していたという伝説を持っている。この手のマッピング能力について絶大の信頼を持つ男である。
その圧倒的なマッピングと身のこなしで、人の波をかき分けて目標物をすべて購入することに成功。流石絵描き、コミケに適合してきている。
適合した勢いでコミケ参加に意欲的になってきた友人A。
A「コミケって参加するのに何がいるの?」
私「なんか、申込書とマニュアルがセットで売ってるっぽい」
ネットとかでダウンロードできるのかと思っていたが、申し込む段階で金がかかるらしい。
すっかり参加に乗り気の友人とともに、売店で申込書セットを購入する。
A「これでいつでもコミケに来れるな!」
私「この申込書って、今後のコミケならどれでも出せるのかな?」
A「そうなんじゃね」
絵師のサガとでもいうべきなのか、Aはこの手の手続きにやたら弱い。
私「(店員さんに)ちなみにこれって、今後のコミケ全部に使えるんですかね」
店員さん「いや、これは次回だけですね」
案の定である。この申込用紙は夏コミにしか使えない。
勉強になったね!
友人の野生スキルのいくらかを、事務関係に振りなおす方法を考えながら、我らの初コミケは終わった。
もしかしたら夏コミに我々がいるかもしれない。その時は是非足を運んでいただきたい。
完