トウブ放送局

ちゅーけんと言います。ただただ思いついたことを書いていきます

現金書留でない

友人の「えんじ」という男の家に遊びに行った時のことである。

彼が「少し用事があるから郵便局に行こう」と、動画サイトを漁る私に声をかけてきたのだ。なんでも、送らなければいけない郵便があるらしい。

外は立っただけで汗が噴き出すような熱気である。インドアの申し子たる私は当然拒否したが、「絶対面白いから」と言い続ける友人に根負けし、重い腰を上げることになった。

 

えんじは自転車をこよなく愛する男である。部屋はほぼ自転車用のガレージと化しており、生活スペースと工具スペースが畳の上に同時に存在する奇妙な部屋で日々を過ぎしている。こいつの家に泊まった時、私の布団の真横には自転車が停まっており、寝返りでも打とうものなら自転車のチェーンに手が引っかかってしまう距離であった。

自転車の横で一夜を過ごした後、外に止めることを提案したが、「雨で装備が傷つくんだ」と説明された。友人が泊まりに来た日くらいスペースを作ってもいいはずだ。

 

えんじ曰く、「自転車の装飾品用のパーツを友人に依頼してるんだけど、素材が足りないらしいから送りに行く」とのこと。どことなくモンハンっぽい。

中身を聞いてみると「古銭」とのこと

 

「古銭」・・・?

 

 

ハンドルの付け根に寛永通宝をつけようとしていたそうだ

自転車好きが考えることはわかんねえ。

 

郵便局の窓口で彼が取り出した封筒は、明らかにじゃらじゃらと音を立てており、店員さんも「これはなんですか?」とそこそこ不審なものを扱うテンションで聞いていた

「古いお金です。いわゆる古銭ですね」

「その場合現金書留になってしまいますが・・・」

「いや、もう使われてないお金なんですよ」

お金として価値があるなら現金書留となるらしい。えんじによれば、寛永通宝は思った以上にざっくざく出てるらしく、歴史材的な価値も通貨価値もないそうだ。

実質観光地のお守りとかキーホルダーの類と同じ扱いで、加工しようが罰せられることはない・・・と彼は言っていた。

しかし郵便局のマニュアルにそんな例外ルールが記載されているとは思えない。というか前代未聞のはずである。寛永通宝を普通郵便で送るやつ

局員の方も困惑しており、「規則を確認するのでしばらくお待ちください」と言い残して裏に回ってしまった。

 

寛永通宝が足りなくなったから送ってくれとか、いつの時代だよ」とか話しながら待っていると、局員の方が窓口に戻ってきてくれた。

局員さん「日本政府が発行してるものですと、原則として現金書留になるんですけど、たぶん違いますよね?」

えんじ「そうですね。」

「たぶん幕府じゃないかな

局員さん「お手数ですが、こちらにご署名のほうお願いできますか」

えんじ「はい」

私「間違いなくお手数かけてるのはこいつのほうですけどね」

このくらいになるともう全員面白くなってきて、やたら会話が弾んでしまった。

帰りがけにえんじが「な?面白かったろ」といったのを、否定できないのが少し悔しかった。

 

そういえば、結局えんじは、郵便局では送った古銭を何に使うのか全く話さなかった。局員の方々は今頃頭を悩ませていることだろう。