天才ロックの女の子は
*今回の記事は、僕がカラスヤサボウさんの天才ロックを聴いて思ったことを書き殴ったものです。
とりあえず、記事を読むにあたって、カラスヤサボウさんの天才ロックを聴いてほしい。なんだったらこの後の記事読まなくていいから、聴くだけ聴いて。超名曲だから
歌ってみたが好みなら島爺さんがお勧め。私も恥ずかしながら島爺さんでこの曲知ったし
じゃあ、私の話聞いてくれる方は、続きを読むをクリックしていただいて・・・
はい、じゃあ本題
私は歌を聴くとき、歌詞よりもメロディや口ずさみやすさを気にしてしまう癖がある。
カラオケが大好きなので、歌ったときの気持ちよさが曲の好みに直結しているのである。
この「天才ロック」もそうだった。確か初めて聞いたのは、バイト帰りの電車の中だったが、一瞬で好みにクリーンヒットしてしまった。もうサビの「愛してる」の響きだけで心地よくなれる予感がする。サビ前のタメも最高だ。これは覚えるしかない!
その日、家に帰るまで延々リピートした。
そして、最寄り駅につく頃、もう大体リズムが頭に入って、歌詞に沿った情景が浮かぶくらいになったころ、
「ん?」
二番の歌詞で想像する情景が変わってきた。最初は小生意気な天才少女がつらつらと恋愛観を語ってるのだろうと思っていたが、何度も聞いているといくらか違和感がある。
二番の歌詞を引用しよう。これだ
ナ ナ ナ 泣いて 泣いては 脳内環境散々
求めて足りない C10H12N2O(セロトニン)
バ バ バ バグのようだね 神経回路はおじゃん
C158H251N39O46S(エンドルフィン)で化かした幸福
ラ ラ ラ ラブもライクも 中毒性の幻想
我らは恋する C8H11NO2(ドーパミン)
ラ ラ ラ ラブもライクも 中毒性の幻想
愚かな病の生体反応 “あいしている”
曲のテンポの良さでしっかりと意味をとっていなかったが、改めて歌詞だけ読むとさきほど私が考えていたストーリーラインだと納得のいかない部分が多くある。
最初四行を恋愛観だと思っていたわけだが、一番の歌詞では男を手玉に取っていた彼女が恋愛事で泣くとは到底思えない。では誰か泣いている奴が別にいるのか?というとこれもしっくりこない。彼女にたぶらかされた男が泣くとも思えないし、ここでほかの女子が出てくる理由もない。
ここで、歌詞に化学式が登場しているから、それがヒントになるかもしれないと思い立ち、リサーチを試みた。
理科には疎いのでWikipediaでドーパミンやエンドルフィン、セロトニンについて調べてみた。
これら三つは全て脳神経に関係する物質である。ドーパミンは快の感情をつかさどる物質で、何かをするための意欲や学習に関係してるらしい。エンドルフィンはいわゆる脳内麻薬で、分泌されると多幸感を感じるやつ。
この二つは何となく知っていたが、セロトニンに関しては全く知らなかった。
睡眠や体温調節を司る物質らしいが、彼女はなぜその物質を求めていているのか。しかもそれは足りていないらしい。
他の物質は少なからず恋愛に関係している。一番の歌詞に出てくるフェニルエチルアミンはずばり恋愛感情を生み出すとされるホルモンである。だが恋愛と関係がありそうな文言は見つからない。
答えを求めてwikiのページをスクロールしていた私は、ある一節に目をとめた
鬱?彼女が?
さっきは化学式のコピペでWikipediaにとんだので、カタカナで検索をかける。
なんということだ。彼女は鬱だったのだ。
頭のいい人ほど鬱病になりやすいとどこかで聞いたことがある。秀才である為のプレッシャーや、未来を予測できるゆえのストレスが重なり、発症すると。
恋愛を脳内物質の愚かな反応だと考え、実行できるほど頭のいい彼女。そしてそこに驚きもなく、「その先全てがわかっちゃう」と言い切れる彼女。
イヤホンで曲だけ聞いていたのをポケットから取り出して、動画を見直す。
セロトニンの欠乏は鬱病の他に睡眠障害を起こす。使われているイラストの少女は目元にクマがあった。
そしてなによりも決定的だったのは、
彼女の手首に包帯が巻かれていたことだ。
天才ロックの主人公たる彼女は精神的に不安定であった。それによって話の流れはどう変わるだろうか。
あなたも私も 脳内物質(おくすり)の言いなり
彼女に手玉に取られた男子は脳内麻薬エンドルフィンの、彼女自身はセロトニンの欠乏によるネガティブ思考に囚われていた。
あなたのすべても奪っちゃう
一番のサビの一節である。世を憂い、自殺まで考えた少女は、その前に男の子のすべてを奪うことに決めた。
男を恋に落とし、意のままにして。それから・・・
そろそろこの世に飽きてきたころなの
天才だから 天才だから
あなたのその手を掴んじゃう
屋上階から飛び出して 銀河の果てまで
彼女は心中しようとしていた。篭絡のための全ては、死にゆく自分の横にもう一人誰かを置いておくことが目的だった。
何故そんなことをしたのかはわからない。一度リスカ自殺に失敗してるところをみるに、自殺を成功させるための策だったのかもしれない。
脳神経から感覚細胞まで、すべて思い通りにした男の子。そんな彼の手を引いて、彼女は屋上から飛び出した。
遍くすべてがわかってしまう退屈な世界から、未知の銀河の果てへ、飛び出そうとした
私 天才だから 天才だから
鼓動の早さも分かっちゃう
しかし実際に彼女が空中を舞うことはなかった。自由落下の中で自らの心音を気に掛けることなどできない。もちろん、相手のも。
何より、彼女は自らの計画の成否で心臓が高鳴ることはない。だからこそこんなまわりくどい心中を行っているのだから。
この「鼓動の早さ」が、彼女のモノなのか、それとも隣の彼のモノなのかはわからない。ただ確実なのは、彼女が彼の心音を聴けるほど密着しているか、彼女が鼓動を早めるような驚くべき何かが起こった、ということだ。そしてそのどちらにしろ状況は変わらない。
あなたはなんにも知らない お馬鹿さん
天才だから 天才だから
愛など無くても分かっちゃう
いいなりだと思っていた彼が、自殺を止めたのである。引っ張られていたはずの手を引いて、まさに空中に飛び出そうをする彼女を抱きとめたのだろう。
彼はただ盲目に従っていたわけではなかった。死のうとする彼女を止めるくらいには自分を保っていた。
彼女は何を思ったのだろうか。鼓動の加速を分析しながら自分の脳内のドーパミンについて考えていたのかもしれないし、成功するはずだった心中が失敗した理由について考えたのかもしれない。
そして彼女は天才であるがゆえに、一つの結論に達する。
脳神経→から感覚細胞
意識の果てまで 全部埋めてよ
ねぇ、あなたを “あいしてる”
セロトニンの欠乏で人生を捨てようとした彼女の空っぽの脳神経は、今や心拍数を上昇させるドーパミンで満たされていた。幸福感を感じさせるエンドルフィンも分泌されていたかもしれないが、それは定かではない。
ともかく、彼女は人生に少しの希望を見つけた。彼女は愛など持ち合わせてない。しかしドーパミンが脳内で分泌されるのなら、セロトニンの欠乏が解決できるのなら、脳内物質(おくすり)のいいなりである彼女は死なないですむ。
精神状態を整えられるなら死ぬ意味はないのである。
彼女は、自らのために、彼の下に身を寄せることに決めた。
しかしそれは、頭のいい彼女なりの照れ隠しに過ぎないのかもしれない。
自らの感情に合理的な判断を下して、恥ずかしさを紛らわせたのかもしれない。
この歌の中で唯一、最後の一節だけ彼女は声を発している。
「あなたを あいしてる」
ドーパミンに浮かされた、まったく理論がなりたたない、「愛などなくてもわかっちゃう」と自分をごまかしつつ、男の子の胸の中その感情に浸る彼女。
遍くすべてがわかる彼女が、わからないものを認識して、人生に希望を持つのはきっとそう遠くないーーー
これが私の想像した「天才ロック」のストーリーだ。歌の歌詞からストーリーを想像するなんてめったにしないので(もっと言うとあまり音楽を聴かないので)、もしかしたら「いや、一回聴くだけでわかるでしょこんなの」という人もいるのかもしれない。
「いや、こうじゃないか?」と、私と別の考察をするひともいるかもしれない。
そういう人の話を聞きたくて、この記事を書きました。
コメントや感想をいただけると嬉しいです。
あほほど長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。